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ドライアイス [技術スタッフ制作レポート]

『春のめざめ』は、大きな舞台転換はありません。
多くの作品は背景幕や舞台セットの転換により場所や空間を表現しますが、『春のめざめ』の場合は始めから終わりまでひとつの舞台セットだけで様々なシーンが展開されていきます。
セリフと照明、そしてお客さまの発想を借りて、ある時は学校の教室、ある時は森の中、またある時は自宅の部屋へと変化するのです。

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男子校の教室/森の中

舞台転換はないにせよ、上演中、舞台裏が慌ただしくなる時間があります。
それは「Those You’ve Known/きみのそばに」。物語の終盤、メルヒオールがあるひとつの決断に至るシーンです。
ここでは7分間にわたってドライアイスが出続けます。
1回の公演で使用するそのドライアイスの量は80kg。
量の基準値としてオリジナルプロダクションからは、“ベンドラとモリッツの足元がスモークで見えないように”と指示があります。

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(撮影:上原タカシ)


このシーンは開幕前に来日していた演出補ジョアン・ハンターさんが舞台において一番こだわったところでもあります。
開幕前の舞台稽古では、彼女の指示のもとスモークを出すタイミングや量を検討していきました。
解凍する水温の高さによりスモークの量はある程度調整できますが、量はクリアしても温度が高くなればなるほど結露が発生しやすくなってしまいます。結露が生じると舞台やオーケストラ楽器が傷み、また床面が滑りやすくなってケガをする可能性も高まるため、極力防がなければなりません。
実験のように調整を重ねていき、今は60℃で解凍しています。

またドライアイスを出す作業のほか、スモークの流れをコントロールするための空調の調整、結露が溜まらないようにするための送風なども同時に行っています。

以上。このシーンの舞台裏を紹介させていただきましたが、ここは物語の中では重要なシーン。
物語の行方にあわせて、スモークが床一面に広がり、青い照明が差し込む神秘的な雰囲気を堪能いただければ幸いです。


(『春のめざめ』舞台監督)

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